祭りのあと

「警察庁と総務省の自殺統計を調べると大阪万博の後とかCDLとかWSJとかが開園すると、明らかにそれ以降、未成年女子の自殺や事故死が僅かではあるけれど増えているんです。理由はまだ分からないんですが。敬子は明らかにCDLに行っているんです。だから、未成年の女の子がCDLに行くと、自殺するという流れがありそうだということです」
 そこで南條は腕を組んで首を垂れた。脂汚れで黒ずんだコートの襟があらわになった。エレベータで1階に着く迄南條のため息混じりの沈黙が続いた。終始、エレベータの低い天井を見上げていた。狭いエレベータを降りながら組んだ腕を解き、南條が話し出した。「待乳山に行ってみるか。去年のその近くの自殺も事件か事故かで、ちょっともめたんだ」
と話しながら白鬚橋に向かって歩き出した。
「隅田川に転落して溺死したということで処理されたが転落が事故なのか自殺なのか確証がいまだにない。事件の可能性も」
と言いながら南條は二人が付いてくるのを目の隅で確かめた。ダッフルの土岐は南條の左側にダウンの亜衣子は右側に付いていた。