先刻迄薄曇りだった朝空が、すっかり真冬の青空になっていた。隅田川の方角から高速道路を走る車列の走行音が微かに聞こえた。正面玄関の外の狭い駐車場で南條が冬季制服の三十歳前後の警察官とパトカーの前で何か交渉していた。南條が助手席にすべりこんだ。土岐と亜衣子は後部座席に乗り込んだ。パトカーは警邏の警察官の運転で、都営団地のテニスコート脇に停車した。都営団地と隅田川に挟まれた都営運動公園で降りた。人工芝のテニスコートでは暇そうな団地の主婦達が黄色い声を上げながら硬式テニスに興じていた。南條はそれを右目で見ながら鼻先でせせら笑うようにテニスコートの脇をすり抜けた。中央の棟のエレベータホールに歩いて行った。
「これがマンションだってさ。どう見たって団地だろうが」
「これがマンションだってさ。どう見たって団地だろうが」