「よくわからん。信子はそれなりに永山を愛していた。信子を永山にくっつけたのは俺だ。永山は医師試験に合格したムラの希望の星でもあった。それがどういう訳か三十すぎても結婚しない。半ば俺が脅すような形で信子の親に持参金をつけさせて永山と結婚させた。永山はその金で医院を開いた。結婚して十年位たって『永山が自分をかまってくれない』と言って俺のところに相談に来たが、そのときに奈津子を身ごもった。それについては後年『欲しかったのは永山の子で、あんたの子ではなかった』と言っていた。そういう意味では俺に対する恨みから奈津子を永山のなすがままにしていたのかも知れない。俺が奈津子を溺愛するのが面白くなかったのかも知れない。奈津子は中学を卒業すると犯罪集団から逃走するように『アメリカに留学したい』と言ってきたので金を出してやった。俺のいい加減な伴性遺伝の作り話も小学生の頃迄は信じて疑わなかったが中学生になって、そのころ奈津子は大嘘だと理解した。しかしカリフォルニアに留学したもんだから知らないうちにノイマンと親しくなってしまった。奈津子に目をつけていた尊広がノイマンに洩らしたのかも知れないし、信子の亭主の高志がノイマンに保護者の役割を要請したのかも知れない。奈津子もたった一人のアメリカ生活で心細かったから簡単にノイマンの餌食になった。奈津子はノイマンによって知らないうちにアメリカのハイスクールで未成年者誘拐の片棒を担がされていたのかも知れない。自分の幼児の頃の写真がアメリカ中に出回っているのを知った時はショックだっただろう。あの子は本当にかわいかったから、オリエンタルエンジェルという通称で児童ポルノの定番になっていた。大学を卒業するとアメリカから逃げるようにして日本に帰ってきた。結局奈津子に安住の地はなかったということだ。自宅から近いということもあったし、両親の勧めもあったし、学歴を生かせるということもあって千葉ドリムランドに就職してしまった。逃げて行ったアメリカでもそうだったし、この柵からは逃れられないと観念したのかも知れない。その頃、信子が子宮ガンで死んだ。俺の目にはけして美人ではなかったがいい女だった。顔の輪郭が女物の下駄のような感じで左目に大きな泣きぼくろがあった。性格に何とも言えない色気があった。その信子が死に際に自分が部落の血を引いていると言ったことが奈津子にとっては相当なショッ


