の1になる』と言い出した。『この土地を買って暫くの間郵便受けを貸して欲しい』と言ってきた。他にもいろいろ物件はあったが番地が気に入った。1丁目1の34は『いい御世』と読める。それに英語表記だと34の1の1になる。永山高志は『英語表記ならノイマンの要求に合致するからここを連絡先にさせてくれ』と再度言ってきた。舞浜に一丁目四十一番3号の土地を買い求めたのはそれからずっとあとのことで千葉ドリムランドが開園した頃だ。『英語表記だと3の41の1になる』と永山高志は悦に入っていた。同じように尊広がWSJの近くに土地を求めたのは十一丁目四番三号だ。これも英語表記だと3の4の11になる。しかし郵便局の話だと3の4の11を逆に11の4の3と表記しても名前で確認して届くそうだ」
そこ迄話して中田老人は大きく肩で息を吸い込んだ。体のきつそうな様子が呼吸音だけで伝わってきた。話をするだけでも、かなり消耗していることが顔色から読み取れた。
「おれは結婚はしなかった。若い頃は女が俺の形相を怖がって寄り付かなかった。いま末期ガンの俺の面倒見てくれているのは浅草で売れない芸者をやっていた優子と言う女だ。俺の運転手もやってくれてる。この土地を手に入れたとき七福神にお礼の賽銭を入れた。万馬券が当たらなければこの土地はそのとき手に入っていなかった。昭和四十六
年頃の話だ。大阪万博が終わり、いざなぎ景気が終わった年の暮れだ」
「それで千百三十四円か」
「七福神には多くの部落民の願いが込められている。俺達にはあまり
にも神頼みでなければならない絶望的なことが多すぎた。だから感謝の意味を込めた。それにこの家は、ちょうど七福神のど真ん中にある」「でも昭和四十六年頃にはもう一円札とか十円札はなくなってたんじゃないですか?」
と土岐が南條から聞いた話を思い出しながら言った。
そこ迄話して中田老人は大きく肩で息を吸い込んだ。体のきつそうな様子が呼吸音だけで伝わってきた。話をするだけでも、かなり消耗していることが顔色から読み取れた。
「おれは結婚はしなかった。若い頃は女が俺の形相を怖がって寄り付かなかった。いま末期ガンの俺の面倒見てくれているのは浅草で売れない芸者をやっていた優子と言う女だ。俺の運転手もやってくれてる。この土地を手に入れたとき七福神にお礼の賽銭を入れた。万馬券が当たらなければこの土地はそのとき手に入っていなかった。昭和四十六
年頃の話だ。大阪万博が終わり、いざなぎ景気が終わった年の暮れだ」
「それで千百三十四円か」
「七福神には多くの部落民の願いが込められている。俺達にはあまり
にも神頼みでなければならない絶望的なことが多すぎた。だから感謝の意味を込めた。それにこの家は、ちょうど七福神のど真ん中にある」「でも昭和四十六年頃にはもう一円札とか十円札はなくなってたんじゃないですか?」
と土岐が南條から聞いた話を思い出しながら言った。


