という返答から暫くして格子戸の奥のヒノキの扉が開いた。髪をひっつめに結い上げた和服の小柄な初老の婦人が立っていた。利休鼠に白く淡い雪華紋様をあしらった和服に先導されて、南條と土岐は格子戸をすべらした。敷地内に踏み込み扉の中に入った。玄関は三畳間程の広さ。年輪の鮮やかなケヤキの一枚板が上がり框に横たわっていた。そこから幅一間近くある廊下が奥の間に続いていた。ムートンのスリッパが用意され、廊下伝いに右手奥の客間に通された。十二畳の広さがあった。一面に緋毛氈が敷き詰められていた。部屋の奥の大きな硝子窓の近くに電動ベッド。床の間を背にして町屋の斎場で会った老人がその上にガウンを羽織ったまま横たわっていた。床の間には翡翠色の人頭程の大きさの岩石、金泥をあしらった観音像、朱泥を塗った恵比寿・大黒天・毘沙門天・弁才天・福禄寿・寿老人・布袋の七福神の陶器像、青磁の香炉が雑然と置かれていた。朦朧体の山水の水墨画の掛け軸が二本掛けられていた。
「町屋斎場でお会いした南條です。この若者は助手の土岐と言います」「そうだったね。まあ、膝を崩して、そこに座ってくれ。何をしに来たかはだいたい分かっているが、さきにそっちの用件から聞こうか」
ベッドの手前の紫檀の座卓を囲むように銘仙判の座布団が二枚並べられていた。その上に胡坐をかきながら南條が尋問をはじめた。
「永山奈津子の殺害から」
「あの子は尊広に殺される運命にあった」
「どうしてです?」
「父親が死んでから仕事をやめたいと言い出した」
「その仕事は?」
「児童ポルノの被写体探しだ。撮影は一昨年迄は父親がやっていた。去年から尊広が大阪から出張してくるようになった」
「その仕事をやめたいというだけで抹殺の対象になったんですか」
「尊広が取り合わなかったんでアメリカに行ってジェイムズ・ノイマ
ンに直訴したのがまずかった。ノイマンから尊広に抹殺の指令が出た」
「奈津子はそのことを全く知らなかったんですか?なんで逃走しなかったんです?」
と土岐が思わず口を挟んでしまった。
「町屋斎場でお会いした南條です。この若者は助手の土岐と言います」「そうだったね。まあ、膝を崩して、そこに座ってくれ。何をしに来たかはだいたい分かっているが、さきにそっちの用件から聞こうか」
ベッドの手前の紫檀の座卓を囲むように銘仙判の座布団が二枚並べられていた。その上に胡坐をかきながら南條が尋問をはじめた。
「永山奈津子の殺害から」
「あの子は尊広に殺される運命にあった」
「どうしてです?」
「父親が死んでから仕事をやめたいと言い出した」
「その仕事は?」
「児童ポルノの被写体探しだ。撮影は一昨年迄は父親がやっていた。去年から尊広が大阪から出張してくるようになった」
「その仕事をやめたいというだけで抹殺の対象になったんですか」
「尊広が取り合わなかったんでアメリカに行ってジェイムズ・ノイマ
ンに直訴したのがまずかった。ノイマンから尊広に抹殺の指令が出た」
「奈津子はそのことを全く知らなかったんですか?なんで逃走しなかったんです?」
と土岐が思わず口を挟んでしまった。


