「それではお焼香をお願いします」
と全員に言い渡した。浪江と規子が先を譲り合っている。喪主は規子になっていたが物腰では浪江が実質的な喪主だった。
「故人に近しいご遺族から順に」
と隠坊がしめやかに囁いた。浪江と規子は先を譲り合った。しびれをきらして隠坊が規子を指名した。
「喪主さまからお願いします」
そう言われて規子が焼香台の前に足を進めた。ばらばらの焼骨を前に小さく頭を下げるとそそくさと焼香を済ませた。同じような仕草で浪江が続いた。その後に中田、高橋が焼香し、南條、土岐と続いた。焼香が終わると隠坊は白い壷に焼骨を納めた。その壷を更に白木の箱に入れその箱を白布で包んだ。それを規子が受け取り全員が収骨室を出た。南條が浪江と規子の後から薄曇りの駐車場に出たところで携帯電話に着信があった。
「鑑識ですが南條さんの携帯ですか?例のバッジの結果が出たんですが、今いいですか」
「ああ、渡辺さんだね」
「あの焼き物の土は粘性質の高い土でシルトと粘土の含有割合が40%程度ありました」
「シルトってなんだ?」
「砂と粘土の間の大きさの粒の土を言います。含有割合から洪積層で、この辺の土で焼かれたもの、ということで」
「その辺に焼き物の窯があったかな?」
「一番近いところだと今戸焼があります。近くに待乳山聖天がありなすよね。あの待乳山は昔、真実の真、土、山と書いてたんですよ。砂の多い浅草近辺の沖積層と違って本当の土だからそう書いたんじゃないですかね。今は平らに見えますが多少こんもりとはしています」
長田浪江と規子の嫁姑は駐車場でタクシーを拾い、骨壷を抱えて去って行った。中田が皺だらけの両手で杖にしがみき、その上に顎をのせて見送った。規子と浪江は遠ざかる車内から、南條に軽く会釈した。
渡邊の報告は続いている。
「5年以上前に最後の窯が閉じられているんです。お預かりしたバッジは焼き具合から最近焼かれたもので」
「じゃ、どこで焼いたんだ」
「趣味の陶芸で電子レンジみたいな窯がありますから、あの大きさならどこでも焼けます」
「どこで焼いたか分からんということか」
とはき捨てるように言いながら南條は電話を切ると、
「あの老人はどこへ行った」
とすごい剣幕で土岐に聞いた。土岐は薄曇の空をぼんやりと口を開けて眺めていた。
「町屋駅の方に歩いていきましたが」
「どこかで見たことがあるんだ」
と全員に言い渡した。浪江と規子が先を譲り合っている。喪主は規子になっていたが物腰では浪江が実質的な喪主だった。
「故人に近しいご遺族から順に」
と隠坊がしめやかに囁いた。浪江と規子は先を譲り合った。しびれをきらして隠坊が規子を指名した。
「喪主さまからお願いします」
そう言われて規子が焼香台の前に足を進めた。ばらばらの焼骨を前に小さく頭を下げるとそそくさと焼香を済ませた。同じような仕草で浪江が続いた。その後に中田、高橋が焼香し、南條、土岐と続いた。焼香が終わると隠坊は白い壷に焼骨を納めた。その壷を更に白木の箱に入れその箱を白布で包んだ。それを規子が受け取り全員が収骨室を出た。南條が浪江と規子の後から薄曇りの駐車場に出たところで携帯電話に着信があった。
「鑑識ですが南條さんの携帯ですか?例のバッジの結果が出たんですが、今いいですか」
「ああ、渡辺さんだね」
「あの焼き物の土は粘性質の高い土でシルトと粘土の含有割合が40%程度ありました」
「シルトってなんだ?」
「砂と粘土の間の大きさの粒の土を言います。含有割合から洪積層で、この辺の土で焼かれたもの、ということで」
「その辺に焼き物の窯があったかな?」
「一番近いところだと今戸焼があります。近くに待乳山聖天がありなすよね。あの待乳山は昔、真実の真、土、山と書いてたんですよ。砂の多い浅草近辺の沖積層と違って本当の土だからそう書いたんじゃないですかね。今は平らに見えますが多少こんもりとはしています」
長田浪江と規子の嫁姑は駐車場でタクシーを拾い、骨壷を抱えて去って行った。中田が皺だらけの両手で杖にしがみき、その上に顎をのせて見送った。規子と浪江は遠ざかる車内から、南條に軽く会釈した。
渡邊の報告は続いている。
「5年以上前に最後の窯が閉じられているんです。お預かりしたバッジは焼き具合から最近焼かれたもので」
「じゃ、どこで焼いたんだ」
「趣味の陶芸で電子レンジみたいな窯がありますから、あの大きさならどこでも焼けます」
「どこで焼いたか分からんということか」
とはき捨てるように言いながら南條は電話を切ると、
「あの老人はどこへ行った」
とすごい剣幕で土岐に聞いた。土岐は薄曇の空をぼんやりと口を開けて眺めていた。
「町屋駅の方に歩いていきましたが」
「どこかで見たことがあるんだ」


