高橋はすぐに話題を変えた。
「尊広の母親と妻が新幹線で遺体引き取りに来るようです。南條さんは事情聴取に立ち会ったんですよね」
「母親の方だけ。かみさんは遺体確認と死亡診断書の受取りで不在で」
「昨日ファックスで送られてきたので、ざっと目を通しましたが、こちらでも少し聞きたいことがあるので隣の部屋で見ていてもらえますか?何かあったら内線で」
と高橋は南條に懇願するように言う。
「鏡の裏で?」
「核心を突く尋問があれば内線で。番号は14です」
「この青年も隣の部屋に置いといてもいい?」
「構いませんが」
三人は二階の取調室の隣の部屋に移動し、浪江と規子の到着を待つことにした。その部屋は3畳程の細長い部屋だった。大阪府警の隠し部屋と同じような造りだった。廊下から見ると、掃除道具でも入っていそうな小部屋だった。机がなく、折りたたみの椅子があるだけで、隣の取調室が硝子越しに見えた。
「多分、東京駅には既に着いた時間なので今頃は病院の霊安室で、解剖の終わった遺体を母親の方が確認をしている頃だと思います」
「永山奈津子の遺体も?」
と土岐。土岐の中では奈津子はまだ死体になっていなかった。生々しいときめきの思い出が心に渦巻いていた。
「いえ、彼女の方は遺体を引き取ってくれる遺族をまだあたっているところです。母方の兄弟も父方の兄弟も、皆亡くなられていて。そうすると従兄妹になるわけですが日頃から交流が全くなかったみたいで引き取ろうという人がいません。男の子もいるので面倒です」
「そうするとどうなるんですか」
と土岐は心配そうに聞いた。
「両親のお墓のあるお寺にお願いして荼毘に付してもらうしかないだろうと。火葬の費用は警察で出すことに。いずれにしても明日には火葬することになると。こういうのって、坊さん、いやがるんですよね。カネにならないし、といって断ることもできないし、喜んで、懇ろに弔うのが、坊さんのあるべき姿だと思うんですが」
そのとき隣の部屋のドアを開ける音がして若い刑事に連れられて浪江と規子が入ってきた。マジックミラーになっていて向こうからは見えないと分かってはいても、視線が合うと土岐はどっきとする。
高橋が南條に軽く会釈してその部屋を出て行き隣の取調室に入った。
「ご足労です」
「尊広の母親と妻が新幹線で遺体引き取りに来るようです。南條さんは事情聴取に立ち会ったんですよね」
「母親の方だけ。かみさんは遺体確認と死亡診断書の受取りで不在で」
「昨日ファックスで送られてきたので、ざっと目を通しましたが、こちらでも少し聞きたいことがあるので隣の部屋で見ていてもらえますか?何かあったら内線で」
と高橋は南條に懇願するように言う。
「鏡の裏で?」
「核心を突く尋問があれば内線で。番号は14です」
「この青年も隣の部屋に置いといてもいい?」
「構いませんが」
三人は二階の取調室の隣の部屋に移動し、浪江と規子の到着を待つことにした。その部屋は3畳程の細長い部屋だった。大阪府警の隠し部屋と同じような造りだった。廊下から見ると、掃除道具でも入っていそうな小部屋だった。机がなく、折りたたみの椅子があるだけで、隣の取調室が硝子越しに見えた。
「多分、東京駅には既に着いた時間なので今頃は病院の霊安室で、解剖の終わった遺体を母親の方が確認をしている頃だと思います」
「永山奈津子の遺体も?」
と土岐。土岐の中では奈津子はまだ死体になっていなかった。生々しいときめきの思い出が心に渦巻いていた。
「いえ、彼女の方は遺体を引き取ってくれる遺族をまだあたっているところです。母方の兄弟も父方の兄弟も、皆亡くなられていて。そうすると従兄妹になるわけですが日頃から交流が全くなかったみたいで引き取ろうという人がいません。男の子もいるので面倒です」
「そうするとどうなるんですか」
と土岐は心配そうに聞いた。
「両親のお墓のあるお寺にお願いして荼毘に付してもらうしかないだろうと。火葬の費用は警察で出すことに。いずれにしても明日には火葬することになると。こういうのって、坊さん、いやがるんですよね。カネにならないし、といって断ることもできないし、喜んで、懇ろに弔うのが、坊さんのあるべき姿だと思うんですが」
そのとき隣の部屋のドアを開ける音がして若い刑事に連れられて浪江と規子が入ってきた。マジックミラーになっていて向こうからは見えないと分かってはいても、視線が合うと土岐はどっきとする。
高橋が南條に軽く会釈してその部屋を出て行き隣の取調室に入った。
「ご足労です」


