「永山奈津子は頸部圧迫による窒息死。これは小谷署からの報告です。殺害方法は両手による頸部圧迫で頸部に鬱血の痕があります。いわゆる扼死です。ほかに顔に暗紫色の鬱血、鼻と口から出血、唇のチアノーゼ、以上より死因を扼死と断定しています」
と高橋は写真を取り出した。白皙の喉元に半径4センチと3センチの暗褐色の鬱血があった。写真で見て右側、奈津子の首の左側の鬱血の方が少し大きかった。
「永山奈津子には死斑が観察されています。体表の両面に見られるので死後、死体が動かされていることが確認されます。死斑退色が見られないので角膜の混濁の程度、直腸温度から発見した時点では死後十五時間以上と推定されます。全身に死後硬直が見られることからも、死亡推定時刻は当日の午前一時頃から午前六時頃となっています」
説明を聞きながらきょとんとしている土岐を見て南條が解説した。「死斑は血流が止まることで重力に従って体の下にできる。死体を動かさなければ下になっている方にだけ死斑ができる。死後十時間以上経過すると血液が次第に凝結してくる。だから凝結する前であれば指で押すと死斑の色が薄くなる。これを死斑退色と言う。永山奈津子の場合は死斑が体表の上下に見られたので死後動かされている。死後硬直は筋肉の硬直で起こる。個人差がかなりあるんで、これだけで死亡推定時刻を断定することはできないが一般的に死後二三時間で徐々に始まり、六七時間で全身に広がる。ピークは死後十五時間足らずかな。ただし殺人の場合はもう少しピークが早くて半日程度が目安だ。目の角膜は死後水分補給がなくなるんで次第に白濁する。眼圧が低下し半日を経過すると混濁が顕著になって徐々に瞳孔が見えなくなる。死亡推定時刻で一番精度の高いのは直腸温度だが、これも外気温度によって異なるんで外気温度が分からないと精度も落ちる」
「あの」
と土岐が遠慮がちに口を挟んだ。南條の解説が止むのを待っていた。「奈津子を殺害したのは長田だと思います。喉の鬱血を見ると右側の方が大きい。長田は右利きだから間違いない。長田は煙草に火をつけるとき、いつも右手でライターを持っていましたから」
「右利きは五万といる。それだけじゃ、長田が永山奈津子殺害の真犯人とは言えねえな」
とたしなめるように南條が言う。
と高橋は写真を取り出した。白皙の喉元に半径4センチと3センチの暗褐色の鬱血があった。写真で見て右側、奈津子の首の左側の鬱血の方が少し大きかった。
「永山奈津子には死斑が観察されています。体表の両面に見られるので死後、死体が動かされていることが確認されます。死斑退色が見られないので角膜の混濁の程度、直腸温度から発見した時点では死後十五時間以上と推定されます。全身に死後硬直が見られることからも、死亡推定時刻は当日の午前一時頃から午前六時頃となっています」
説明を聞きながらきょとんとしている土岐を見て南條が解説した。「死斑は血流が止まることで重力に従って体の下にできる。死体を動かさなければ下になっている方にだけ死斑ができる。死後十時間以上経過すると血液が次第に凝結してくる。だから凝結する前であれば指で押すと死斑の色が薄くなる。これを死斑退色と言う。永山奈津子の場合は死斑が体表の上下に見られたので死後動かされている。死後硬直は筋肉の硬直で起こる。個人差がかなりあるんで、これだけで死亡推定時刻を断定することはできないが一般的に死後二三時間で徐々に始まり、六七時間で全身に広がる。ピークは死後十五時間足らずかな。ただし殺人の場合はもう少しピークが早くて半日程度が目安だ。目の角膜は死後水分補給がなくなるんで次第に白濁する。眼圧が低下し半日を経過すると混濁が顕著になって徐々に瞳孔が見えなくなる。死亡推定時刻で一番精度の高いのは直腸温度だが、これも外気温度によって異なるんで外気温度が分からないと精度も落ちる」
「あの」
と土岐が遠慮がちに口を挟んだ。南條の解説が止むのを待っていた。「奈津子を殺害したのは長田だと思います。喉の鬱血を見ると右側の方が大きい。長田は右利きだから間違いない。長田は煙草に火をつけるとき、いつも右手でライターを持っていましたから」
「右利きは五万といる。それだけじゃ、長田が永山奈津子殺害の真犯人とは言えねえな」
とたしなめるように南條が言う。


