祭りのあと

「尊広は長田隆と同じで家庭内暴力の絶えない男で、浪江も規子も生傷が絶えなかったそうです。二人とも幾度も家出を繰り返し、その都度、隆も尊広も詫びを入れて、もとの鞘におさまると言うパターンで。それに嫁も姑も、二人とも面子からか、行政に保護を求めんかった。まあ、民事不介入ということで、こちらも、ほっといたようです」
「戸籍は浪江が尊広の母、隆は尊広が生まれてから籍をいれてますね」
「これも密偵からの情報で、尊広は隆の子どもでは、なかったかも知れんちゅうことで。そのせいか尊広は幼児の頃から隆から酷いいじめにあっていて、体中、痣や煙草の焼けどのあとがあるっちゅう話です。それもあって、どうしょうもないワルになったと」
「すると、かりに尊広が隆の子でないとすると、実の父親は誰です?」「隆が関東に出っぱったときの義兄弟ではないか、という噂です」
「その義兄弟というのは誰ですか。名前分かりますか?」
「関東の部落出身者らしいっちゅうことしか情報がありません。浪江は知ってるはずですが父親は隆に間違いないっちゅうて吐きません」
 南條は新幹線の最終の時間を確認し、満腹になる前にその店を切り上げることにした。小関にはいろいろと無理なお願いをしていたので、形式的な固辞はあったがその店の食事代は南條が払った。南條の財布には新幹線代だけがかろうじて残った。小関とはその店の前で別れ、南條と土岐は地下鉄で新大阪に向かった。新大阪に着くと、新幹線のホームで南條が語りかけて来た。
「今日から泊まる所がないだろう」
「ええ。私物は永山クリニックに置きっぱなしです。肝心の現金八十万円は証拠品で押収されているでしょうね。衣類は引き取れるでしょうが、いま手元には八万円足らずしかありません」
「とりあえず浅草に部屋をとってやっから今夜はそこに泊まれ。目が覚めたら電話くれ」
と言い終えたところに新幹線列車が入線して来た。