祭りのあと

「墨田署の斉藤です。昨日の深夜から、舞浜署と合同で永山整形クリニックのガサ入れをしていたんですが、その長田尊広の件ですが、行方不明だったんですが、けさ程、舞浜港のバースからBMWが引き上げられ、中から長田尊広と永山奈津子の息子の信夫が発見されました。死因はまだ確定していませんが、初見ではどうも溺死のようです」
「なにィ!それで、死亡推定時刻は?」
「初見ですが、多分真夜中の一時ごろから午前三時ごろではないかと」
「こっちの小谷署で昨夜の事情聴取の続きがあるんでそれを片付けたらそっちに行く。舞浜署だな」
「本部は舞浜署に設置されましたから。それから昨夜依頼された昨年夏の110番通報者の音声の件ですが、いま、入手しました」
「110番の通報者の音声?添付ファイルでメールしてくれ」
「それから、鑑識からの連絡ですが、平野敬子の検体から、インフル
エンザのウイルスも、風邪の細菌も発見されなかったということです」
「ん?ということは仮病だった?保険金詐欺の状況証拠になるな」
という携帯のやりとりを聞きながら土岐が薄っすらと目を覚ました。
「なんかあったんですか?」
「長田のBMWが舞浜の海から引き上げられた。中から長田が溺死体で発見されたそうだ。男の子も一緒だ」
「えっ!自殺ですか?無理心中ですか?」
「まだ分からん。でも状況からして多分そうだろう。生きていたとしても事件が発覚してしまえばいずれ死刑は免れない。これで全てが、闇の中に葬られた。残るのは、大阪で事情聴取を受けている長田の母親とかみさんだが、一体、何を、どれだけ知っているのか」
 スッピンの亜衣子が目を覚ました。はだけてあらわになっていた足元を掛け布団を引き寄せて慌てて隠し、横になったま迄、沈鬱な面持ちの二人に明るく挨拶した。普段から薄化粧のせいか、スッピンの顔を平気でさらしている。瞬きを繰り返す目の焦点が合っていない。
 南條の携帯電話のメール着信音が鳴った。南條は添付ファイルを開き、携帯電話を耳にあてた。
「どこかで聞いたことが。あまり鮮明ではないが。聞いてみるか?」と南條は自分の携帯電話を土岐に差し出した。土岐はそれを受取って、もう一度音声を再生させて耳にあてた。
「あっ!これは奈津子です、間違いなく。通報したのは、やっぱり」