祭りのあと

のぼせあがってたんだ。魂を抜かれたみたいに。連絡はまだないがいまごろ長田尊広は逮捕されて尋問されているか逮捕状が間に合わなければ墨田署に任意同行を求められて事情聴取を受けているだろう。あいつの誤算はこの世の中、カネが人生で一番大切だと思っている人間ばかりでないということを知らなかったことだ。確かに署内謹慎を破れば懲戒免職の可能性はある。そうなれば退職金はパーだ。と言ってもノンキャリの退職金はキャリアと比べりゃたいした金額ではないが。大体俺がカネが人生で一番大切だという人間であればとっくに警部か警視に昇進し副署長位に成り上がっていたかも知れねえ。俺はやりたい放題のことをやってきた。休職に追い込まれたこともあったし減俸も数知れずだ。出世のためにとかカネのためにというのが大きれえな人間だ。署長や上司には年中シカトされてきた。俺みてえな刑事は他にいなかった。それに今回の謹慎も言った方も真剣ではなかった。形式的だ。事情を話したら刑事部長も簡単に目をつぶってくれた。ただ謹慎処分がなければ永山奈津子は助けられた。部長と署長を説得するのにそれぞれ小1時間ずつかかった。それがなければ永山整形クリニックに朝駆けしていたところだ。永山奈津子は可哀相なことをした」
と語りながら南條はコップのビールを空にして、テーブルの上に伏せて置いた。それからぐいのみで手酌で地酒を呑み始めようとした。土岐は自分の前のお銚子の首を持って南條のぐいのみに熱燗を注いだ。南條はうれしそうに溢れそうになる地酒に目を注いだ。
「長田の容疑は何ですか?」
と言う土岐の質問に生気がなかった。
「死体遺棄でしょっ引くように言ったが、永山奈津子の殺害と死体遺棄教唆、少女連続殺人と保険金殺人。とりあえずそれだけかな。あと死体遺棄教唆の方だが、こっちはお前さんのためには立件しない方がいいだろう。検事さんになんとかとりなすよ」
と言いながら南條は土岐と亜衣子のぐいのみに地酒を注いだ。