その夜、土岐は小谷署で執拗な事情聴取を受けた。南條が脇に陪席した。土岐が容疑者に仕立て上げられそうになると勘所で脇から補足説明をした。実際、小谷署の刑事の任意の事情聴取は最初から土岐を容疑者として決め付けているようなやりかただった。南條の助言で、申し開きはなんとかできた。小谷署員は容疑者として、土岐の拘留を強く求めた。南條は身元保証人として、
「逃亡のおそれはない」
と大声で怒鳴った。居場所を明らかにし許可のある迄県内を出ないことを条件に強引に土岐を小谷署から連れ出した。小谷署員も情報をもたらしたのがそもそも南條であったことから南條の要求をしぶしぶのんだ。翌朝も尋問を続けることを約束し、日付の変わる直前で事情聴取はひとまず打ち切られた。全員が疲労困憊していた。小谷署の尋問室の外の薄ら寒い廊下で亜衣子が辛抱強く待っていた。土岐の顔を見ると泣き出しそうになった。土岐はどう接していいのか分からなかった。背後で南條が言った。
「俺はドクター林のメールをチェックする」
と言い残して南條は薄暗い廊下の奥の部屋に消えた。
「待っててくれて、ありがとう」
と亜衣子に言うのが土岐にとっては精一杯だった。土岐と亜衣子は黙って長椅子に腰掛けていた。時々顔を見合わせては、疲れ切った苦い笑みを交わした。土岐は亜衣子に何をどう説明しようかと懸命に考えていた。しかし気が動転していて考えが分散するばかりで一向にまとまらなかった。負い目のような気まずさもあった。亜衣子が質問してくれれば答えようかと思ったが亜衣子は寒々とした廊下の一点を見つめたまま茫然として何も話さない。
奥の部屋から南條がプリントアウトしたメールを持って出てきた。
「よっぽど暇と見える。十通もメールを送ってよこした」
とメールを土岐に渡した。
「車の中で読んでみろ」
と言われて土岐はそれを亜衣子に渡した。
「車の中で文字を読むと気分が悪くなるんで」
先に歩きながら南條が言った。
「宿についてからドクター林のメールをまとめて説明してやろう」
「逃亡のおそれはない」
と大声で怒鳴った。居場所を明らかにし許可のある迄県内を出ないことを条件に強引に土岐を小谷署から連れ出した。小谷署員も情報をもたらしたのがそもそも南條であったことから南條の要求をしぶしぶのんだ。翌朝も尋問を続けることを約束し、日付の変わる直前で事情聴取はひとまず打ち切られた。全員が疲労困憊していた。小谷署の尋問室の外の薄ら寒い廊下で亜衣子が辛抱強く待っていた。土岐の顔を見ると泣き出しそうになった。土岐はどう接していいのか分からなかった。背後で南條が言った。
「俺はドクター林のメールをチェックする」
と言い残して南條は薄暗い廊下の奥の部屋に消えた。
「待っててくれて、ありがとう」
と亜衣子に言うのが土岐にとっては精一杯だった。土岐と亜衣子は黙って長椅子に腰掛けていた。時々顔を見合わせては、疲れ切った苦い笑みを交わした。土岐は亜衣子に何をどう説明しようかと懸命に考えていた。しかし気が動転していて考えが分散するばかりで一向にまとまらなかった。負い目のような気まずさもあった。亜衣子が質問してくれれば答えようかと思ったが亜衣子は寒々とした廊下の一点を見つめたまま茫然として何も話さない。
奥の部屋から南條がプリントアウトしたメールを持って出てきた。
「よっぽど暇と見える。十通もメールを送ってよこした」
とメールを土岐に渡した。
「車の中で読んでみろ」
と言われて土岐はそれを亜衣子に渡した。
「車の中で文字を読むと気分が悪くなるんで」
先に歩きながら南條が言った。
「宿についてからドクター林のメールをまとめて説明してやろう」


