「仏を押さえた。永山奈津子だ。いま、小谷温泉の近くだ。けさの手はず通り、死体遺棄容疑で長田尊広の身柄を抑えてくれ。それから、舞浜署に捜査協力依頼して、永山整形クリニックのガサ入れだ。詳細は追って小谷署から連絡する。それから、大阪府警の小関刑事に、うちの署長か副署長か刑事部長から、長田尊広の自宅フォトスタジオのガサ入れの依頼と、やつの母親とかみさんに、明日いちばんにでも任意同行を求めて事情聴取を依頼してもらってくれ。こちらからも直接、小関刑事には連絡は入れとくがよろしく」
土岐は、頭を抱えてレンタカーの脇にうずくまって硬直していた。目は開けていたが焦点が定まらない。何も見えていない状態だった。傍らに亜衣子が寄り添っていた。それさえ気付かない。盆の窪に神経を集中させて火薬がいつ爆発するか身構えていた。小さな衝撃が後頭部を襲い、血管が破裂して動脈の血液が、ほとばしるように盆の窪の下に広がる。その溢血が神経を圧迫し、激しい頭痛にのたうちまわる。そのうち、意識が遠のいて人生を終える。そういうシナリオを想像しながら身動きのできない状態でいた。後頭部に意識を集中させればさせる程、盆の窪のあたりの血流が波打った。心臓の鼓動と同調して、体全体に余震のように脈動を伝播させているのを強く感じた。次第に息苦しさに、呼吸が乱れてきた。いまかいまかと火薬の破裂を待つ土岐の肩を南條が叩いた。土岐はびっくりしてのけぞった。腰を道路に落とし、両手のひらを地面についた。手の平に塵埃と、たまたまそこに捨てられていた煙草の吸殻が、押しつぶされて付着した。
「大丈夫?」
と亜衣子が土岐の肩に手を置いて心配そうに声をかけた。
「どうやら大丈夫のようだな。千に三つ程度のリスクはあったが賭けに勝った。警察病院の若い脳外科医の言ったことは確かだった。詳しいことは麓の小谷署の取調べのあとで、ゆっくりお前に話してやる」と南條は亜衣子とともに土岐の肩を抱きかかえた。亜衣子が土岐の尻に付着した土埃を華奢な手で払う。南條は土岐をパトカーに押し込んだ。運転席で警察官が小谷署の一課に署活系無線で応援を依頼し、状況を説明していた。もう一人の警官は現場維持のためにレンターカーの周りに黄色い捜査線をテープで張り始めていた。それを眺めながら「これだから初動捜査が遅れるんだ」
土岐は、頭を抱えてレンタカーの脇にうずくまって硬直していた。目は開けていたが焦点が定まらない。何も見えていない状態だった。傍らに亜衣子が寄り添っていた。それさえ気付かない。盆の窪に神経を集中させて火薬がいつ爆発するか身構えていた。小さな衝撃が後頭部を襲い、血管が破裂して動脈の血液が、ほとばしるように盆の窪の下に広がる。その溢血が神経を圧迫し、激しい頭痛にのたうちまわる。そのうち、意識が遠のいて人生を終える。そういうシナリオを想像しながら身動きのできない状態でいた。後頭部に意識を集中させればさせる程、盆の窪のあたりの血流が波打った。心臓の鼓動と同調して、体全体に余震のように脈動を伝播させているのを強く感じた。次第に息苦しさに、呼吸が乱れてきた。いまかいまかと火薬の破裂を待つ土岐の肩を南條が叩いた。土岐はびっくりしてのけぞった。腰を道路に落とし、両手のひらを地面についた。手の平に塵埃と、たまたまそこに捨てられていた煙草の吸殻が、押しつぶされて付着した。
「大丈夫?」
と亜衣子が土岐の肩に手を置いて心配そうに声をかけた。
「どうやら大丈夫のようだな。千に三つ程度のリスクはあったが賭けに勝った。警察病院の若い脳外科医の言ったことは確かだった。詳しいことは麓の小谷署の取調べのあとで、ゆっくりお前に話してやる」と南條は亜衣子とともに土岐の肩を抱きかかえた。亜衣子が土岐の尻に付着した土埃を華奢な手で払う。南條は土岐をパトカーに押し込んだ。運転席で警察官が小谷署の一課に署活系無線で応援を依頼し、状況を説明していた。もう一人の警官は現場維持のためにレンターカーの周りに黄色い捜査線をテープで張り始めていた。それを眺めながら「これだから初動捜査が遅れるんだ」


