土岐がレンタカーに戻り、トランクを開けようとしたとき人跡のすくない自然の夜のしじまの中で携帯電話のマナーモードの着信バイブレーター音がかすかに鳴った。一瞬、二つある携帯電話のどちらに着信があったのか分からなかった。胸の携帯電話には振動はなかった。マナーモードにしていないので胸ポケットにある長田から受取った携帯電話のはずはなかった。その携帯電話を胸ポケットから尻ポケットに入れ直した。コンソールボックスから南條からもらった携帯電話を取り出した。車の外からドアを開け放ったまま、上半身を突っ込んで受信した。
「土岐です」
としっかりした小声で押し殺すように答えた。
「南條だ。声が小さいな。まだ遺棄していないな」
と言う南條の声にかぶさるようにサイレンが麓の方角からこだますように聞こえてきた。
「はい」
と言う声は緊張のせいか風邪をひいたように掠れていた。
「そのまま、そこで待て」
土岐は寒気にたえきれず、レンタカーの中に戻った。長田から受け取った携帯電話を尻に敷いた。サイレンは次第に大きくなってきた。麓の方から闇の中の樹間越しに、ちらちらと移動するヘッドライトが見えた。サイレンはその動きに少し遅れて聞こえてきた。サイレンの音が盗聴されるだろうとは思ったが尻ポケットの携帯電話をコンソールボックスに格納するだけにした。かわりに南條からもらった携帯電話を胸ポケットに差し込んだ。サイレンがうるさい程に聞こえた。ヘッドライトがまぶしい程に明るくなった。パトカーがレンタカーの後ろに停車した。止まるなり、南條の野球帽が飛び出してきた。暗い車内の土岐を見つけるとレンタカーの窓をノックし、首を突っ込もうとした。土岐はそれを制し、車から出てフロントドアの前に立った。
「お前は何も知らないのだぞ。長田に運搬と遺棄を頼まれた。ブツが何かをお前は聞かされていない。いいな」
と大声の叫びを押し殺して南條は言い放つ。パトカーに戻りかけた。県警のパトカーから若い警察官が二人出てくるのを見ると踵を返してもう一度土岐に念を押した。
「お前は何も知らないんだぞ」
と言い捨てて南條は二人の警官の前に立った。
「このトランクの中のものを職務質問して下さい」
と南條が言うと片方の制服の警官が土岐の所にやって来た。
「すいません、後ろのトランクを開けてもらえますか」
「土岐です」
としっかりした小声で押し殺すように答えた。
「南條だ。声が小さいな。まだ遺棄していないな」
と言う南條の声にかぶさるようにサイレンが麓の方角からこだますように聞こえてきた。
「はい」
と言う声は緊張のせいか風邪をひいたように掠れていた。
「そのまま、そこで待て」
土岐は寒気にたえきれず、レンタカーの中に戻った。長田から受け取った携帯電話を尻に敷いた。サイレンは次第に大きくなってきた。麓の方から闇の中の樹間越しに、ちらちらと移動するヘッドライトが見えた。サイレンはその動きに少し遅れて聞こえてきた。サイレンの音が盗聴されるだろうとは思ったが尻ポケットの携帯電話をコンソールボックスに格納するだけにした。かわりに南條からもらった携帯電話を胸ポケットに差し込んだ。サイレンがうるさい程に聞こえた。ヘッドライトがまぶしい程に明るくなった。パトカーがレンタカーの後ろに停車した。止まるなり、南條の野球帽が飛び出してきた。暗い車内の土岐を見つけるとレンタカーの窓をノックし、首を突っ込もうとした。土岐はそれを制し、車から出てフロントドアの前に立った。
「お前は何も知らないのだぞ。長田に運搬と遺棄を頼まれた。ブツが何かをお前は聞かされていない。いいな」
と大声の叫びを押し殺して南條は言い放つ。パトカーに戻りかけた。県警のパトカーから若い警察官が二人出てくるのを見ると踵を返してもう一度土岐に念を押した。
「お前は何も知らないんだぞ」
と言い捨てて南條は二人の警官の前に立った。
「このトランクの中のものを職務質問して下さい」
と南條が言うと片方の制服の警官が土岐の所にやって来た。
「すいません、後ろのトランクを開けてもらえますか」


