祭りのあと

@現在糸魚川静岡中央構造線上の糸魚川街道の木崎湖の畔にいます。レンタカーのトランクには少女の遺体があります。これから小谷温泉方面に糸魚川街道を左折し、昨夜と同様に交通標識の柱に例のメソポタミア文字のある地点で遺体を遺棄する予定です。できれば遺体を遺棄する前に遺体遺棄未遂か遺体遺棄幇助で逮捕していただければ幸甚です。長田に渡された携帯電話にGPSが組み込まれ、現在位置を把握されているため、警察に自首することができません。また携帯電話から十メートル以上離れると自爆装置が起動するため、携帯電話から離れることもできません。長田か奈津子が持っている起爆装置をかれらから奪取していただければ僕の命は救われます。少女連続殺人事件の全容解明ができれば僕の命など取るに足らないものとは思います@
 そこ迄打ち込んで送信した。暫く返信を待っていたがマナーモードでのメール着信のバイブレーターに着信の振動がなかった。あまり長く停車していると長田に疑われる。太陽が山の稜線に半分以上隠れたのを合図にレンタカーのエンジンを起動させた。南條からもらった携帯電話はコンソールボックスに格納した。ナビゲーターは目標迄の残りの距離を四十四キロメートルと表示していた。平均時速二十キロで目標地点に七時前に到着する。土岐はゆっくり走行することにした。左手に小さな中綱湖が見えた。その先に大きな青木湖が水を満々とたたえていた。青木湖の東岸を抜けた。更に北上した。フォッサマグナの渓谷の中を148号線と姫川と大糸線が絡み合って並走し始める。短いトンネルを幾度もくぐる。崩れてきそうな崖の横っ腹を街道は蛇行していた。中土駅前の小谷村営バスの塗装のはがれたバス停でひとまず駐車した。白ペンキのはげかけたバス停の時刻表を車内から見ると最終バスは午後7時前だった。死体を遺棄している最中にバスにこられると困る。少し時間があったが最終のバスの出るのをバス停の数メートル手前で待つことにした。JR駅前には何もなかった。民家すらぽつんぽつんとある程度だ。エンジンを切り、車窓の外に目をやって村営バスを待っていると携帯電話のマナーモードの振動音がした。コンソールボックスの中の携帯電話がプラスチックの空洞の中で振動音を共鳴させながら存在を主張していた。ボックスを開けて南條からもらった携帯電話のメールを急いで見た。