「今日は長野県と新潟県の県境に遺棄してもらう。どこもそうだが、県境というのは行政の公共事業の入りにくいところ。公共事業をやるとなれば県庁同士の調整が必要だ。お互いの懐具合の問題と落札させる予定の土建業者の問題がある。だから人跡未踏の地形が多い。中央高速で松本迄行って、そこから糸魚川街道を北上し、中土で小谷温泉方面へ右折しその途中で遺棄してもらう。昨日と同じような地形で、同じ交通標識の柱に墨汁で例のメソポタミア文字が書いてある。昨日書いてきた。雨が降ると消える可能性があるので、そのときは、レンタカーのナビに登録するこの住所を目印に。夜中であれば通りかかる車もないとは思うがくれぐれも目撃されないように。何か不都合があった場合は山道で脳溢血の頭痛に襲われて前後不覚になって崖下に転落することになる。交通事故で処理されるだろう。転落する場所によっては長い間発見されない、ということもある。あるいは、対向車と正面衝突するか、または山側の壁面に突っ込んで激突することになるかも知れない」
と長田に言われて、盆の窪に埋め込まれた火薬チップを思い出した。
「急ぐ必要はない。ゆっくり行って。スピード違反のネズミ捕りに引っかかってトランクを開けられたら一貫の終わりだから。制限速度を守って行けば時間的には丁度いい。でも帰宅は多分深夜になるだろう。帰宅したときささやかなパーティの準備をして待っている。君が我々の仲間になったことを祝って」
と長田が言いかけたとき、
「ゆっくり行って臭いのほうは大丈夫なんですか」
「防臭剤が沢山入っている。一日ぐらいなら大丈夫」
「もう行っていいですか?」
と土岐の方から出発を言い出した。土岐は再び車庫に向かった。レンタカーのエンジンを掛けるとガレージのシャッターがゆっくりと巻き上げられて、春めいた陽光が差し込んできた。トランクに死体さえなければ信州へのドライブに心ときめくところだ。土岐の気分は消沈していた。犯罪者の集団の一員として、もう引き返せないところ迄来てしまったという思いが沈鬱な気分を醸成していた。
高速湾岸線から首都高速に入り、午前中に中央自動車道に入った。
と長田に言われて、盆の窪に埋め込まれた火薬チップを思い出した。
「急ぐ必要はない。ゆっくり行って。スピード違反のネズミ捕りに引っかかってトランクを開けられたら一貫の終わりだから。制限速度を守って行けば時間的には丁度いい。でも帰宅は多分深夜になるだろう。帰宅したときささやかなパーティの準備をして待っている。君が我々の仲間になったことを祝って」
と長田が言いかけたとき、
「ゆっくり行って臭いのほうは大丈夫なんですか」
「防臭剤が沢山入っている。一日ぐらいなら大丈夫」
「もう行っていいですか?」
と土岐の方から出発を言い出した。土岐は再び車庫に向かった。レンタカーのエンジンを掛けるとガレージのシャッターがゆっくりと巻き上げられて、春めいた陽光が差し込んできた。トランクに死体さえなければ信州へのドライブに心ときめくところだ。土岐の気分は消沈していた。犯罪者の集団の一員として、もう引き返せないところ迄来てしまったという思いが沈鬱な気分を醸成していた。
高速湾岸線から首都高速に入り、午前中に中央自動車道に入った。


