祭りのあと

「私の先祖はアーリア人がインダス文明に侵入した紀元前二千年から千年にかけて第六王朝のバジ王朝のときにバビロニアを出ました。今のインド北部に移住して占いを生業にしていた。インド人に彫りの深い顔をした人がいるでしょ。あれがアーリア人。インダス文明を作ったのはいま南インドに住んでいるドラヴィダ人でどちらかというと丸顔でアーリア人とは明らかに違う。ペルシャ帝国を征服したアレクサンダー大王はインダス川を越えてパンジャブに侵入した。インド中央部に向かおうとした頃、私達の先祖はさらに東に移住しました。中国の戦国時代の終わり頃、匈奴に身を投じた。前漢の武帝の時代の大将軍衛青が七回目の匈奴討伐をしたときにみんな捕虜になった。それで中国の長安に移住したの。中国でも霊能力を生かして易経を学んでそれを教えることを生業にしてた。その能力を買われて元の時代、文久の役のとき日本侵略の日取りを占ったけど、これがはずれて台風に遭い、罰を恐れて戦乱のどさくさにまぎれて元から逃亡し、瀬戸内海の因島に渡り和寇を組織し、江戸初期迄はそこに定着していた。『高麗史』や『明史』に和寇は日本人だけではないという記述があるのだけど私達の先祖のことを言っている」
とそこ迄話してきて土岐が全く聴いていないことを察知した奈津子は早々に話を切り上げ、彼に就寝を促した。

16 ホワイトワックス姫

 翌日の朝土岐は長田のノックで目を覚ました。食堂に行くと誰もいなかった。ファストフードのモーニングセットのようなものを長田が電子レンジから取り出して提供してくれた。いつもきっちりとセットしている長田のリーゼントに五六本の頭髪のほつれがあった。
「予行演習だったことを言わなかったことを不愉快に思ってる?」
「言われても言われなくても同じこと」
「今日もレンタカーをあそこで借りてもらうがお金はまだあるね」
「八十万円ありますが。このお金はどこから出ているんですか?」
「スポンサーがいる。スイスの仲間が我々に送金してくれている」と長田は自分専用のマグカップでコーヒーをすする。
「スイス系銀行でおろしたお金は沢山の金額だったようですが」