祭りのあと

「私の先祖は江戸時代は寺子屋でそろばんとお習字を教えていた。ひとつのお寺だけではなく、いくつものお寺を掛け持ちしていて、しかも一箇所には定住しないで日本中のお寺を渡り歩いた。そこで見目麗しい、邪悪な少女を見出すと間引いていた。当時は身分社会だから寺子屋に来るのは町人で、町人は支配階級ではないから邪悪な女の子はせいぜいやくざになるような子供を産むくらいでしょう。だから武家に見初められそうなかわいい女の子を捜した。戦国時代の大殺戮で殆どの邪悪な女の家系は武家社会では途絶えていた。僅かに残った残虐な家系が二百五十年の間に徐々に増えて行って町人や農民の間にも増えて行って明治維新以降それがついに暴発して太平洋戦争に至った。太平洋戦争でかつての戦国時代の大掃除と同じように軍属になっていた邪悪な家系はかなり途絶えたけれど生き残った軍属もかなりいた。戦後のベビーブームでは小学校を中心に私の祖母や母が教員になって小学校単位で少女を排除していたけれど、治安が維持されるにつれて次第にやりにくくなって。それに小学校単位では転勤を希望したとしてもカバーできる範囲があまりにも狭いので大人数の少女が一箇所に集まる場として最初に目をつけたのが大阪万国博覧会だった。でも、これは効果はあったけれど、たった半年で終わってしまって、それに子供の数の減少から、小学校の先生になるのも段々難しくなって、私の場合は、CDLに職を得て」
「そういう危険な犯罪を続けてきたあなたの家系が何で六千年も」
「少女の殺害が発覚したことも過去には、きっとあったでしょう。でも月に一人少女が食中毒や崖下に転落して死んだって二十世紀後半迄は事件にもならなかったでしょ。歴史的にも残るのは大量殺人だけで私達の先祖がしてきたことは歴史の闇の襞に埋没してきた。かりにいま、あなたが世間にこのことを公表しても荒唐無稽だと言ってだれも信じない。それに実行犯は絶対に口を割らない。あなたも私も長田さんも。言う理由がないのよ。六千年前からずっと」
 聞きながら土岐は次第にうとうとし始めていた。体の芯から疲労困憊していた。奈津子は寝物語のように甘ったるい声で話し続けた。