と言いながら南條はレンタカーの中で茫然としている土岐に指先で出てくるように指示した。土岐は条件反射的にコンソールボックスの中から携帯電話を取り出してポケットに忍ばせた。長田から手渡された携帯電話から離れることに恐怖感があった。しかし、携帯電話を身につければ盗聴される。
「犯人は土岐明、土岐のトはつち、キは岐阜のギ。アキラは明るい、二十九歳。無職。住所不定」
と南條はゆっくりと言った。
「少女を投棄した、間違いないな!」
と南條に詰問されて土岐は仕方なく頷いた。火薬はいつ破裂するか。そのことばかり気になった。南條の言動についても上の空だった。ポケットの中の携帯電話に音声を拾われないように右手で携帯電話を覆うように押さえつけた。
「女の子は生きてたのか」
「分りません」
「レスキュー隊が来る迄犯人をパトカーに拘束」
と南條は若い警官に指示した。警官は南條の剣幕に気圧された。土岐は警官に二の腕を捕まれてパトカーの後部座席に押し込まれた。
「不法投棄の現行犯で緊急逮捕」
と言ったことのない言葉に呂律が怪しくなりながらもその警官はなれない手つきで、土岐の両手首に手錠をかけた。ひんやりとした硬い感触が土岐の手首をとりまいた。
もう一人の警官がパトカーの中で署活系無線でレスキュー隊の応援を要請していた。状況説明で現在位置、少女の転落、谷底などを要領よく伝えていた。同じような内容の連絡を須玉署の捜査一課にも入れていた。応援を頼んでいた。そういう会話の飛び交う中で土岐は思考停止の状態にあった。疲労のせいもあった。全てが終わったという喪失感が体中を支配していた。押さえつけた携帯電話と太腿の間にしびれが滲み出てきた。パトカーの中で別の若い警官の職務質問をうけた。
「そこから、何を投げたんだって?」
「寝袋と腐植土とガムテープです」
「それを証明するものはあるの?」
と言われて土岐は手錠をはめられた不自由な手で左のポケットからホームセンターで受取った領収書を取り出した。警官に見せた。
「なる程、なんでそんなことしたの?」
「むしゃくしゃして」
「墨田署の刑事さんは、女の子が入っているって言っているけど」
「さあ、見たわけではないので」
「でもさっき、墨田署の刑事さんに聞かれたら女の子を捨てたことを認めていなかった?」
「いいえ」
「じゃあ、寝袋の中になにが入っていたの?」
「犯人は土岐明、土岐のトはつち、キは岐阜のギ。アキラは明るい、二十九歳。無職。住所不定」
と南條はゆっくりと言った。
「少女を投棄した、間違いないな!」
と南條に詰問されて土岐は仕方なく頷いた。火薬はいつ破裂するか。そのことばかり気になった。南條の言動についても上の空だった。ポケットの中の携帯電話に音声を拾われないように右手で携帯電話を覆うように押さえつけた。
「女の子は生きてたのか」
「分りません」
「レスキュー隊が来る迄犯人をパトカーに拘束」
と南條は若い警官に指示した。警官は南條の剣幕に気圧された。土岐は警官に二の腕を捕まれてパトカーの後部座席に押し込まれた。
「不法投棄の現行犯で緊急逮捕」
と言ったことのない言葉に呂律が怪しくなりながらもその警官はなれない手つきで、土岐の両手首に手錠をかけた。ひんやりとした硬い感触が土岐の手首をとりまいた。
もう一人の警官がパトカーの中で署活系無線でレスキュー隊の応援を要請していた。状況説明で現在位置、少女の転落、谷底などを要領よく伝えていた。同じような内容の連絡を須玉署の捜査一課にも入れていた。応援を頼んでいた。そういう会話の飛び交う中で土岐は思考停止の状態にあった。疲労のせいもあった。全てが終わったという喪失感が体中を支配していた。押さえつけた携帯電話と太腿の間にしびれが滲み出てきた。パトカーの中で別の若い警官の職務質問をうけた。
「そこから、何を投げたんだって?」
「寝袋と腐植土とガムテープです」
「それを証明するものはあるの?」
と言われて土岐は手錠をはめられた不自由な手で左のポケットからホームセンターで受取った領収書を取り出した。警官に見せた。
「なる程、なんでそんなことしたの?」
「むしゃくしゃして」
「墨田署の刑事さんは、女の子が入っているって言っているけど」
「さあ、見たわけではないので」
「でもさっき、墨田署の刑事さんに聞かれたら女の子を捨てたことを認めていなかった?」
「いいえ」
「じゃあ、寝袋の中になにが入っていたの?」


