祭りのあと

と言われて、土岐は見失わないように急いでBMWから降りた。女の子は首都高速7号小松川線の高架の一本手前の路地をスニーカーでスキップを踏みながら歩いていく。やがて、十字路で女友達と手を振りながら別れた。一人になった。ほかに人通りはない。そこで、土岐は長田に言われたセリフを思い出しながら、小走りにその女の子の背後に近寄った。
「この近くに交番ある?」
と土岐は棒読みするような口調で言った。女の子は土岐の大根振りにいぶかしそうに振り向いた。土岐はその女の子の表情にどうしようもない不快感を覚えた。
「この財布を拾ったんだけど、ちょっと急いでいるんで代わりに交番に届けてもらえるかな?」
「お礼はもらってもいいの。一割だっけ?」
 茶色の革財布を渡すと女の子はすぐに中をあらためた。
「なァんだ、あんまりはいっていない」
「じゃお願いしたよ」
と言い残して東京方面に土岐は足早に去った。京葉道路に消えて行こうとする土岐とすれ違うようにBMWがその女の子の横に滑り込んで停車した。長田は少女に車で近寄ると声を掛けた。
「そのお財布、多分おじさんが落としたものだと思うけど」
「本当?じゃいくらはいっているか言ってみて」
「たいして入っていないよ。千円札で六千円ぐらいだったかな」
「当たり。でも交番に届ける。お礼がもらえないでしょ」
と少女は疑い深そうなしかめっ面で口をとがらせる。
「交番迄行かなくてもお礼をあげる」