と店主はピンクのビニールサンダルを毛糸の靴下につっかけて一旦店の外に出た。引き戸の開け放たれている隣の看板屋に入って行った。土岐はそれについて行った。古本屋の店主が声を掛けると暫くして店の奥からでっぷりとした巨漢が現れた。ずっと昼寝をしていたような眠そうな顔をしている。しきりに頭髪をかきむしっている。
「もう亡くなったんだけどさ、永山という女の先生を覚えていないか?旦那は医者だって」
と店主がぞんざいに聞くと、太った男はゆるんだ二重の目を両手の甲でこすりながら、
「ああ、いたなあ。熱心な先生だった。いつも遅く迄仕事してたな。それがどうしたの?」
と言うと、南條が店主の脇にしゃしゃり出た。
「すいませんお休み中。墨田署の者ですが何かほかに覚えていることはありませんか?」
「どんな?」
と目を大きく見開いて豆鉄砲を食らった顔をしている。
「事件とか」
「事件?そういえば事件じゃないけど自殺だか事故だかががあったよな。とっても成績のいい女の子が屋上から飛び降りたか転落したかした。自殺にしちゃあ動機が不明でね。暫くこの辺じゃうわさが絶えなかった。それを発見したのがたしか永山先生でちょっと手伝ってくれってんで自宅の整形外科医院にうちの親父と一緒にその子を運んで行った。結局暫くして死んだみたいだったけど」
「そのうわさというのは、どういううわさですか?」
「変態か何かに襲われて、転落したんじゃないかって」
そこに古本屋の店主が割り込んできた。
「そうそう、そういえばあったな。でもあの子、うちの店でずいぶん万引きしてたんだぞ」
「それは初耳だ」
と看板屋は口を開けたまま閉じない。
「もう亡くなったんだけどさ、永山という女の先生を覚えていないか?旦那は医者だって」
と店主がぞんざいに聞くと、太った男はゆるんだ二重の目を両手の甲でこすりながら、
「ああ、いたなあ。熱心な先生だった。いつも遅く迄仕事してたな。それがどうしたの?」
と言うと、南條が店主の脇にしゃしゃり出た。
「すいませんお休み中。墨田署の者ですが何かほかに覚えていることはありませんか?」
「どんな?」
と目を大きく見開いて豆鉄砲を食らった顔をしている。
「事件とか」
「事件?そういえば事件じゃないけど自殺だか事故だかががあったよな。とっても成績のいい女の子が屋上から飛び降りたか転落したかした。自殺にしちゃあ動機が不明でね。暫くこの辺じゃうわさが絶えなかった。それを発見したのがたしか永山先生でちょっと手伝ってくれってんで自宅の整形外科医院にうちの親父と一緒にその子を運んで行った。結局暫くして死んだみたいだったけど」
「そのうわさというのは、どういううわさですか?」
「変態か何かに襲われて、転落したんじゃないかって」
そこに古本屋の店主が割り込んできた。
「そうそう、そういえばあったな。でもあの子、うちの店でずいぶん万引きしてたんだぞ」
「それは初耳だ」
と看板屋は口を開けたまま閉じない。


