祭りのあと

という住所をメモした。浦安駅から東京メトロ東西線で大手町駅で降りた。千代田線に乗り換え、町屋駅で降り、徒歩で荒川区役所に行った。教育委員会で公立小学校の古い名簿から、永山姓の女教師を探した。永山信子という名前の住所を確認し、小学校を突き止めた。その頁をコピーした。夕方になったので日暮里駅迄歩いた。京成本線で上野駅で降り、地下鉄銀座線で浅草駅迄行き、安禄山に向かった。安禄山で土岐は携帯電話に盗聴器が仕込まれていること、盗聴器を手放したり、オフにすると土岐の身に危険の及ぶことを筆談で伝えた。給仕の老婆は二人のやり取りを奇妙な表情で見守っていた。
 翌日日暮里の小学校の校門の前に土岐と南條が立ったのは夕方近くだった。土岐は引っ越しの荷造りを終えていた。南條はその日の署の雑務を終えていた。小学校のモルタルの校門は閉ざされていた。校舎に人の気配はなかった。片側一車線の道路沿いの小学校の隣にひなびた古本屋があった。店先には漫画週刊誌が山積みになり、店内には漫画の単行本がびっしりと並んでいた。店の奥に店主らしい初老の頭の禿げ上がった貧相な男が仕入れてきたマンガ本を品定めしていた。価格のシールを貼り付けて売価をボールペンで書き込んでいた。南條はその店主が土着の住民らしいとあたりをつけた。
「こういう者ですがちょっと隣の小学校の話をうかがえますか?」
と南條が警察手帳をちらりと見せて近づくと禿の店主は差し込んでくる弱い夕陽にまぶしそうな渋面をつくり、薄汚れたうらなりのような寝ぼけ顔を上げた。
「だんなは、こちらの住まいは、永いんですか?」
「ええ、店を構えて先代からだから、もう五十年以上になりますか」
「ということは、だんなの出た小学校は、このとなりで?」
「レベルは高い小学校じゃなかったけど隣なんで」
「永山先生を覚えていないですか?」
「俺の担任は渋谷と桑田だった」
と店主は薄暗い本棚に細めた目を泳がせながら記憶の細い糸をたぐっている。腕を組んで首を垂れた。記憶を促すように、
「その女教師の旦那は整形外科医なんですが」
と南條が言う。店主ははっとしたように顔を上げた。
「いたかな?なんせ全校で四十クラス近くあったからな。ということは教員はそれ以上いたわけだ。もう学年やクラスが違うとぜんぜん分からない。ちょっと、となりの看板屋に聞いてみよう」