祭りのあと

「そう、普通ね。あなたは信じないかも知れないけれど、私は邪悪な遺伝子を持った女の子の目を見ると、体中に悪寒が走って体中に鳥肌が立つの。ひと月に一人出会うかどうかという数だけど。もう一度私の目を見て!黒いのが角膜、その真ん中に瞳孔があるでしょ。私はここを見るの。私の瞳孔と女の子の瞳孔が一直線上に並ぶと、その子の心を感じるの。感じるのはここ。触ってみて」
と奈津子が自分の眉間を左手の人差指で指差し、右手で土岐の左手を取り、そこを触らせた。皮膚は柔らかいが、その下に水晶体のしこりのような薄いレンズのような形をしたものが指先に感じられた。
「これアジナーチャクラって言うの。仏像にあるのと同じ。ここで感じるの。あなたの瞳を見ていると暖かい水を感じる。氷つくような血の流れている少女の瞳を見ると、ここから冷たいパルスが私の脳幹に伝わり、脳幹から延髄へ伝わって延髄から脊髄を瞬時に駆け巡るの。私の母も叔母も同じところにアジナーチャクラがあったの」
「それでランドでモラルの低い女の子の目を見ていたのか」
「あなたこの間の火曜、遠くから窺っていたものね。私が凍りつく程慄然とする女の子の特徴は他の人と感情を全く共有できないこと。例えばもらい泣きとかつられ笑いとか同情とか思いやりというのが全くないの。そういう他人と同調する感情の動きが完全に欠けているの。それだけなら情緒の未成熟な場合も同じだけれど私達が探しているのはそういう欠落と自己中心の残虐性を兼ね備えた女の子。例えば自分の欲望のために他人に平気で嘘もつくし抹殺もするし、よこしまな計画もめぐらせる。あなたは嘘をつくときどもる癖があるでしょ。普通の人は嘘をつくとき感情の抵抗があるから、手の発汗作用で嘘発見器で簡単に見破られる。でも彼女らは平然と嘘をつくから嘘発見器にまるで反応しない。相手が痛がるからとか相手がかわいそうだからとか『自分が相手の立場だったら』という心の働きが完全に欠けているから自分の子供でも兄弟でも両親でも夫でも友人でも同僚でも平気で殺すことができる。女性の場合は自分の思い通りにならない周囲の人をあやめるだけだけど男の場合は何十年に一人、環境が整うと大量無差別殺人者になって登場する。私達の祖先はこういう男たちによって数百年、数千年、数万年前から虐殺されてきたのよ。歴史上は英雄扱いされている人が多いわ」