土岐には奈津子の言い方が、丁寧ではあるが、少し命令口調であることが少し気になった。
「就職先は永山整形クリニックで、整形市場の統計分析が業務ということでいかがですか?」
「叔母はだませても、指導教授は間違いなくへんだと気付きますよ」「まあ、そのときは、そのときです。で、引越しの手配は、来週の月曜日の午後一番でよろしいですか?お手数でしょうけれど、すぐに持ち出せるように、午前中に荷造りしておいていただけますか?引越し用の車両を、こちらに寄越しますので。よろしいですか?」「よろしいも何も、僕にいささかでも選択の自由があるんですか?」と土岐は少しいきり立った。行き場のない苛立ちがそうさせた。
「私達に協力して下されば、どのような自由でもあります」
と長く濃い睫毛を引き上げて、潤んだような瞳で土岐を見つめる。
「何を協力するんですか?」
「私達の情報を外部に漏らさないこと」
「僕は何も知りませんよ。漏らしたくても漏らしようがありません」「長田さんが写真技師で最近大阪から来たことご存知でしょ。私がロサンゼルスのホスピタリティコンベンションに行ったことだって。ごめんなさい。手紙の方は隠しカメラで監視していたの。あの天井の隅にある隠しカメラは引越しのときにはずして下さる?」
そう言われて、奈津子が指差す方を見ると天井のしみにまぎれて隠しカメラのレンズがこちらに向けられていた。それを見て、土岐は全てのことに諦めがついたような気がした。
「汚いけど座りませんか?なんで僕がこんなひどい目にあっているのか話してもらえますか。本当に精神的にそろそろ限界です。こんな理不尽なことは生まれて初めてのことです」
と土岐はフローリングの床に倒れ込むようにして腰を下ろした。
「そうね、あなたは、本当にひどい目にあっているわ。申し訳ないと思っているのよ。私の立場を分って欲しいとは言いません。でもどこから話したらいいのかしら。話してしまったらあなたは永遠に元には戻れないのよ。それで本当にいいの?」
と言いながら斜めの目線を土岐からはずさないまま奈津子は横座りに床に腰を下ろした。
「どっちにしても戻れないんでしょう?理不尽だけど諦めています。でも諦めるにしてもある日突然何も知らずにというのは嫌だから」
「まあ、諦めのいいこと。それでは、どの辺から話しましょうか?」
「就職先は永山整形クリニックで、整形市場の統計分析が業務ということでいかがですか?」
「叔母はだませても、指導教授は間違いなくへんだと気付きますよ」「まあ、そのときは、そのときです。で、引越しの手配は、来週の月曜日の午後一番でよろしいですか?お手数でしょうけれど、すぐに持ち出せるように、午前中に荷造りしておいていただけますか?引越し用の車両を、こちらに寄越しますので。よろしいですか?」「よろしいも何も、僕にいささかでも選択の自由があるんですか?」と土岐は少しいきり立った。行き場のない苛立ちがそうさせた。
「私達に協力して下されば、どのような自由でもあります」
と長く濃い睫毛を引き上げて、潤んだような瞳で土岐を見つめる。
「何を協力するんですか?」
「私達の情報を外部に漏らさないこと」
「僕は何も知りませんよ。漏らしたくても漏らしようがありません」「長田さんが写真技師で最近大阪から来たことご存知でしょ。私がロサンゼルスのホスピタリティコンベンションに行ったことだって。ごめんなさい。手紙の方は隠しカメラで監視していたの。あの天井の隅にある隠しカメラは引越しのときにはずして下さる?」
そう言われて、奈津子が指差す方を見ると天井のしみにまぎれて隠しカメラのレンズがこちらに向けられていた。それを見て、土岐は全てのことに諦めがついたような気がした。
「汚いけど座りませんか?なんで僕がこんなひどい目にあっているのか話してもらえますか。本当に精神的にそろそろ限界です。こんな理不尽なことは生まれて初めてのことです」
と土岐はフローリングの床に倒れ込むようにして腰を下ろした。
「そうね、あなたは、本当にひどい目にあっているわ。申し訳ないと思っているのよ。私の立場を分って欲しいとは言いません。でもどこから話したらいいのかしら。話してしまったらあなたは永遠に元には戻れないのよ。それで本当にいいの?」
と言いながら斜めの目線を土岐からはずさないまま奈津子は横座りに床に腰を下ろした。
「どっちにしても戻れないんでしょう?理不尽だけど諦めています。でも諦めるにしてもある日突然何も知らずにというのは嫌だから」
「まあ、諦めのいいこと。それでは、どの辺から話しましょうか?」


