祭りのあと

〈面倒なことだが、事情が良く分からんので、おまえさんの言うとおり手紙を書く。例の運転手の長田は撮影技師として大阪の長田フォトスタジオに1ヶ月程前迄いた。父親の隆は十年程前に死んでいない。母親は存命で小学校教員をかなり以前に定年退職した。女房はWSJで掃除婦をしている。長田は現在は舞浜の永山整形クリニックにいる。渉外係の永山奈津子はCDLの正規の社員だ。評判は悪くない。父親が整形外科医、母親が小学校教員だった。現在のクリニックの建物はCDLが開園した頃に建てた物だ。ただし母親はずいぶん以前に、父親は昨年の春に他界した。周辺に人口がないのでクリニックの客は余りいなかったようだ。父親が存命だった頃はCDL内で捻挫とかくじきがあった場合、奈津子がこのクリニックを紹介していた。以上の身辺調査は奈津子と長田のお二人さんには気付かれないようにやった。とりあえず、いま分かっているのはこんなところだ。これでロサンゼルスのテーマパーク職員と初等中等教育関係者のつながりと似たようなものが日本にもあったことが検証された。もう間違いない。これはとてつもないヤマだ。明日は永山奈津子の母親が勤務していた小学校へ行く。お前も来い。こっちは定年との競走だ。まごまごしていたらこのヤマは片付かないかも知れない。ついでに、俺のパソコンのメールアドレスを教えておく。たったいま、ロサンゼルスのドクター林からメールが入ったが、この内容はいずれ伝える。nanjoh@****.tokyo.jp 南條〉
 土岐は携帯電話をユニット・バス近くの小テーブルの上に置くとTシャツとチノパンツを脱いだ。シャワーを浴びながら南條の情報を反芻してみた。頭髪をシャンプーで洗うときの痛みで、埋め込み手術が永山整形クリニックで行われたのだと推察した。シャワーから出て鏡を見ながら後頭部の絆創膏を市販の物と貼り替えた。何かが埋め込まれているようで、小さなコブができていた。据付のエアコンのスイッチを入れた。コンビニのハンバーグ弁当を食べた。ロフトベッドに横になっているとドアを控えめにノックする音がした。