祭りのあと

@火曜に運転手に会うことができました。バッジは日本メソポタミア同好会の会員バッジで縦の串刺しはJAPANのj、横の串刺しはNIPPONのnを象徴しているそうです。誰かがバッジをなくしたことは聞いていないかという問いには、知らないという返答でした。少女転落死に関係がありそうな心証は得られませんでした@
 土岐は一日中CDLとWSJに関係しているという自殺の事例についてその検証がいずれも徒労に終わったという詳細を文章化することに費やした。携帯電話を目の前に置き、一人ごとを言いながら文書を作成した。ネガティブな文章は書いていて気だるくやるせないことに初めて気付いた。あす第一次草稿が完成し、深野に見せ、多少の追加注文や修正に応じ、明日の金曜日中には調査報告書を完成させ予定通りアルバイトを終了させるという目途がついた。
 夕方になって南條から土岐の携帯電話に着信があった。いきなり、
罵声から始まった。
「あれだけ言っただろ!勝手なことをするなって!事件現場に証拠物件を落としたやつが正直に落としましたと言うか!バカ!どこで逢って、どういう会話があったか教えろ!安禄山にすぐこい!」
と怒鳴りまくって切れた。これも盗聴されているとしたら、とりあえず今日を生き延びるためにはどうしたらいいのか。土岐は仕方なく安禄山に電話を入れた。
「先日南條刑事とお邪魔した土岐といいます。今日伺う約束になってるんですが体調が悪いので行けないと伝えてもらえますか?」
「はい、わかりました。トキさんですね」
と答えたのは主人だった。今晩でなくとも再び南條から連絡のあることが予想された。亜衣子がトイレに立った隙に彼女の机の引き出しから速達分の切手を失敬し、墨田署の南條宛に手紙を書いた。
〈南條警部補殿。事情があって詳細を話せません。携帯電話もメールも盗聴されています。連絡や要件は郵便かパソコンのメールアドレスにお願いできれば幸甚です。tokiakira@******.net土岐明〉
 ついでに命にかかわることだと書き添えようとしたが思いとどまった。南條が本格的にこの事件にかかわってくるような気がしたからだ。あとは今晩安禄山から南條が電話をしてこないことを祈った。その日は帰宅途中の赤いポストに速達郵便を投函して帰宅した。見慣れた通勤途中の窓外を流れる風景が昨日迄と違うように見えた。
 
12 伴性の遺伝