祭りのあと

「最初にとても大切なことを言います。枕元にあるあなたの携帯電話はこれから絶対に体から離さないで下さい。携帯電話から十メートル以上はなれるとあなたの後頭部に埋め込んだ少量の火薬が爆発して、あなたの脳の血管が破裂します。この技術は細い管状の装置の先に充填した微量の火薬を爆発させて、内蔵した微小のハンマーを血管壁に衝突させて破砕するものです。作動するところは装置の先にあって、血管壁を破砕します。先端が開いた直径三ミリのステンレス製の細い管の中に一ミリのハンマーとその後ろにハンマーを動かす火薬と着火装置が内蔵されています。内蔵されたハンマーは着火された火薬の爆発で血管壁に時速五百キロ程で突き刺さります。あと点火用スイッチと点火用電池があって作動する所へ火薬の点火を行います。点火されれば脳溢血であなたの命は九分九厘なくなります。万が一助かったとしても植物人間状態になります。だから電池切れにもくれぐれも注意して。携帯電話からの微弱な電波が途切れるとあなたの命はなくなります。絶対にオフにしないように」
と言われて土岐は思わず携帯電話を手元に引き寄せた。奈津子の言ったことに半信半疑のまま朝食を終えた。脱力感が霧消し少しずつ体の中に活力が湧いてくるような気がした。頭痛はまだ続いている。昨夜程ではない。奈津子の話はまだ続いた。
「あなたの後頭部に埋め込んだ火薬つきチップをどこかの病院で取ろうとしたり警察に駆け込んだりは絶対にしないで下さい。あなたの携帯電話には盗聴器とGPSがついていてどこにいて何をしているか分かります。そのGPSと盗聴器はあなたと最初にお会いした時ファミレスで電池パック交換と一緒に埋め込んだものです」
と言われて土岐は最初の出会いで奈津子が土岐の携帯電話の電池を交換したことを思い出した。そのときの状況を思い出すと奈津子の仕草が何となく不自然なものだったように思えてきた。大きめのボックスバッグが異様にふくらんでいたことを思い出した。