激しい頭痛がした。頭痛は後頭部の下の方、盆の窪の辺りだった。ずきずきと血流がその辺で波打ち、鋭い裂傷の痛みも伴っていた。疼痛の上にガーゼと絆創膏が当てられていた。薄く目を開けると白い壁紙が見えた。足を動かすとシーツがすれる音がする。他には何も聞こえてこない。激しい痛みをこらえて寝返りを打ってみた。微かにベッドが軋んだ。スプリングはない。反対側も白い壁だけだ。起き上がれるか試してみた。皮膚が裂けそうな激しい痛みがそれを拒んだ。足と手をゆっくり動かした。激痛に耐えて寝返りを打つこと以外は何もできそうになかった。あまりの痛さに仰向けに寝ることもできなかった。盆の窪あたりの痛みに慣れてくると激しい空腹に襲われた。周囲の白い壁がマジックハウスのように回転している。体が軽く、胃の中に何もないのがわかった。目を開け続けていると、あたり一面が激しくビックリハウスのようにぐるぐると回りだした。目を閉じても体の芯が回転を続けている。遠くの方で男と女が何かを言い争うような声が聞こえた。断片的な声から内容はよく分からなかった。やがて足元の方からドアの開く音が聞こえた。誰か入ってきた。こつ、こつという革靴の足音が土岐の目の前で止まった。白衣を着た男だった。少し見上げると見覚えのある運転手だった。長田尊広という名前を土岐はまどろむように思い出した。
「もう一晩、痛みがきついはずだ。明日になれば生活に支障はなくなる。口を動かすと痛いかも知れないが何か食べた方がいいだろう。今ぬるいおかゆを持ってくる。痛かったら飲み込めばいい」
と慇懃無礼に言い残して長田は部屋を出て行った。言葉の端々に形容しがたい邪気を感じた。暫くして足元のドアの開く音がした。ローズピンクのプリンセス・ワンピースが入ってきた。恐る恐る土岐が見上げると奈津子だ。
「まだ痛む?明日になれば大分和らぐから今晩一晩の辛抱よ。痛いと思うけれど、そろそろ何か食べないと。これ口に合うかしら」
と奈津子はベッドの脇に白い椅子を持ってきて土岐の顔の脇に座った。手には小さい銀のスプーンと御飯茶碗を持っている。スプーンでおかゆをすくって土岐の口元に運んだ。
「顎を動かすと多分痛いでしょうから、そのまま飲み込んで」
「もう一晩、痛みがきついはずだ。明日になれば生活に支障はなくなる。口を動かすと痛いかも知れないが何か食べた方がいいだろう。今ぬるいおかゆを持ってくる。痛かったら飲み込めばいい」
と慇懃無礼に言い残して長田は部屋を出て行った。言葉の端々に形容しがたい邪気を感じた。暫くして足元のドアの開く音がした。ローズピンクのプリンセス・ワンピースが入ってきた。恐る恐る土岐が見上げると奈津子だ。
「まだ痛む?明日になれば大分和らぐから今晩一晩の辛抱よ。痛いと思うけれど、そろそろ何か食べないと。これ口に合うかしら」
と奈津子はベッドの脇に白い椅子を持ってきて土岐の顔の脇に座った。手には小さい銀のスプーンと御飯茶碗を持っている。スプーンでおかゆをすくって土岐の口元に運んだ。
「顎を動かすと多分痛いでしょうから、そのまま飲み込んで」


