んだ。自分自身もその後に続き店の中に消えた。店内の様子は硝子に外光が反射して外から良く窺えなかった。土岐は十メートル程手前の別の回転扉から、店内に入ることにした。店内は身動きのできない程ではなかったが、家族連れやアベック客で溢れていた。かれらがブラインドになって奈津子の様子を程よく観察することができた。彼女は回転扉の手前で店の外から入ってくる客に挨拶をしていた。そのなかに勢い良く回転扉を回転させて店内に駆け込んでくる中学校低学年の女の子がいた。その少女が店内に入ってくると先のポイ捨ての女の子にしたのと同じように少し前かがみになり女の子の目線で前に立ちふさがり、口を結んだまま、にこやかに腰を折っている。先刻と同じように目は笑っていない。その女の子のいかにもなれない化粧をしたという顔を凝視する。奈津子が話しかけている様子はなかった。奈津子はその店を出るとトゥーンタウンのレストラン街に向かった。ゆっくりと踵からジグザグに歩き二階建てのレストランに入った。そのレストランには旧式のスケルトンのおもちゃのようなエレベータがあった。子供たちが面白がって飲食もせずに乗り降りしていた。奈津子はそのレストランに入るとテーブルの間を舞うようにして歩いた。やがてエレベータに乗ろうとすると、先に乗った高校生らしいソバージュの茶髪の女の子がこちら向きになったまま閉じるボタンを押して奈津子の目の前で扉を閉じた。奈津子は傍らの螺旋階段を駆け上りながら体の向きを回転させてスケルトンのエレベータの中の少女を見守るように見つめ続けた。ゆっくりと上ってゆくエレベータに沿って螺旋階段を足早に回転しながらにこやかに上っていく奈津子を目で追った。奈津子の微笑みの中に名指しがたい妖しいものを感じていた。目は笑っていない。毒リンゴを持つ魔法使いの老婆のイメージがオーバーラップした。暫くして奈津子が螺旋階段を下りてくるのを見届けた。トゥモローランドを経由してワールドバザールに戻った。スウィートハートカフェの前で意を決して奈津子を携帯電話で呼び出してみた。呼び出し音が三回して出てきた。事務的でしっかりした話し方に土岐は気後れを感じた。
「あのう、先週お会いした統計研究所の土岐ですが」
「先日はどうも」
艶のある声ににこやかな彼女の表情が想像できた。
「実は、い、いまCDLに」
「どちらのあたりですか」
「あのう、先週お会いした統計研究所の土岐ですが」
「先日はどうも」
艶のある声ににこやかな彼女の表情が想像できた。
「実は、い、いまCDLに」
「どちらのあたりですか」


