祭りのあと

 土岐は電話を切った。アドベンチャーランドは三月最初の火曜日にもかかわらず、以前亜衣子と来た日曜日と混み具合と差がないように見えた。土岐は通りの右側の建物の縁に沿って縫うように歩いて行った。アドベンチャーランドには、それらしい姿は見かけられなかった。ウエスタンランドを通り過ぎてクリッターカントリーに左折するか、ファンタジーランドへ右折するか迷っていたとき二十メートル程先のその分岐点の中央に白雪姫の姿を認めた。派手なヒヤシンスブルーのプリンセス型ワンピースの姿形から遠目にも奈津子に違いなかった。空飛ぶダンボとキャッスルカルーセルの間あたりで少し前傾姿勢になって家族連れに道案内をしているようだった。その家族連れがクリッターランドへ歩き去ると左右を見回しながら通りをジグザグにゆっくりと踵から先に地面につけて歩き始めた。始終下を見てゴミがあるとすぐ拾い、近くのゴミ箱へ持っていくという動作を繰り返していた。カップルがアリスのティーパーティーの前で彼女にデジタル・カメラのシャッターを押してくれと頼んだ。別の若い男の二人連れはピノキオの冒険旅行の前で代わる代わる奈津子と腕を組んでデジタル・カメラの写真を撮り合っていた。プーさんのハニーハントの前で青年三人連れを彼らの携帯電話3台でそれぞれ写真を撮った。それから奈津子を中央に、二人がその左右に代わる代わる立ち、交代で写真を撮り合っている。そのとき奈津子の五メートル程先を中学生くらいの男の子と腕を組んで歩いていた小学校高学年の女の子がトゥーンパークの前で紙くずをポイ捨てした。奈津子は小走りして、それを拾い上げると、さらに小走りしてその女の子をグーフィーのはずむ家の前で追い越して振り向いた。奈津子は腰をかがめ、女の子の目線で女の子の前に立ち手を後ろで組んで後ずさりをしながら、口を結んでにこやかにしている。目は笑っていない。女の子の顔をじっと見つめている。話しかけているようには見えない。二、三歩後ろ向きに歩いたところで奈津子は踵を返した。後ろ手にさっきの紙くずをもっているのが見えた。そのまま彼女はスーベニア・ショップに立ち寄った。入口は回転扉で、先に十歳ぐらいの男の子が勢い良く飛び込んで行った。その後ろの若い女性が回転扉に挟まりそうになって、叫び声をあげた。奈津子はさっと近寄り回転扉の動きを抑えた。それからその若い女性を回転扉の中に送り込