「斎藤くん」


 すぐに反応できなかった。同じ学校の生徒から最近名前を呼ばれることがなく、自分のことだと一瞬わからなかったのだ。だが、間違いなく木村先輩は僕の名前を呼んだ。


「どうしました?」


 木村先輩の長いまつ毛のまぶたが閉じる。そのまま、腰から頭を下げた。