扉を開けてしまった純子さんは亡くなっている。あの階段を登ってしまうと、僕も無事では済まないかもしれない。

 それでも、純子さんの行動のおかげで、心肺が停止した琴音が息を吹き返した可能性がある。迷ってはいられなかった。


「琴音、今行くよ」


 僕は木の階段に向かって走り出した。この先にある奇跡を信じよう。