いてもたってもいられず席を立つと、後ろから風を感じた。すぐに風が吹いている方へと振り返る。

 開いている。映画館の出口の扉が開いているのだ。外気が館内に流れ込んでいる。

 この風がもはや懐かしい。

 肌で感じてわかる。これは僕が本来いる世界の空気だ。扉の外は元の世界であり、ここから出れば帰れる。