映画館の時と同じだ。客観的に見れば記号よりも不気味であるはずなのに、なんだか落ち着いていく。

 深く息を吐いた。覚悟を決める。ここで逃げるわけにはいかない。なにも聞かずに帰るのは、彼女を見捨てるようで嫌だ。

「お願いします」


「わかった。場所を変えようか。いい場所があるの」


 木村先輩が歩き始めたので、僕も後ろをついて行った。下校する生徒の流れに逆らい駅を出て、通学路を逆走する。僕が知らない道に入り少し歩くと、看板にナスが書かれたカフェがあった。