あの虹の向こうへ君と

 丘の草花を風がそっと揺らすと、ほんのりと甘い愛しい香りがする。

 琴音の匂いだ。いつもの琴音だ。呼び掛ければ、きっと僕に応えてくれる。


「琴音……」


 小さな声で名前を呼んだ。琴音の身体を少し持ち上げて、顔を見てみる。