駅には人が増えてきた。


 僕を含むここにいる人達と、木村先輩とでは決定的な違いがある。自分の死期を知っているということだ。あと二ヶ月で死んでしまうため、それまでにどうしても聴きたいのだろう。


「いいですよ。明日持っていくので、教室を教えてください」


 仮に彼女の寿命がわからなくても、僕は貸していたと思う。サッドクロムを聴く人が同年代でいないため、仲間が見つかってうれしい気持ちもあるのだ。

 不思議と、なにか運命的なものさえ感じている。