「ありがとう。やっと……やっとここに……」


 雨が降るよりも早く、琴音の大きな瞳から涙が溢れた。僕は彼女の細く白い左手を、右手でそっと握る。琴音が左手にギュッと力を込める。

 暖かい。琴音は生きている。

 今、僕はなにを言うべきかわからない。だから、手を繋いだ。