「そのCD、私に貸してくれないかな」


 思いもしない木村先輩の言葉に、全く反応できなかった。今この人に、CDを貸してほしいと言われた気がする。


「この曲だけ、聴いたことがないの」


 必死にお願いするわけでもなく、彼女はサラッと言った。やはり、CDを貸してほしいと言われているのだ。

 嫌っているはずの僕に頼むことを、一瞬疑問に思ったが、すぐに答えが出てしまう。