「先輩も知っているんですか?」


 小さく頷いてから、彼女は答えた。


「私も、あのバンド好きなの」


「えぇ!」


 木村先輩がサッドクロムを好きだなんて考えたこともなく、反射的に大きな声が出てしまった。驚く僕とは対照的に、彼女は全く動じずにいる。

 とりあえず改札の前でいつまで喋っているのは良くないので、邪魔にならないところまで移動した。