やはり、木村先輩だ。

 相変わらず無表情だが、綺麗な形をした口が半開きになっていて、呼吸をするたびに肩にかかったシルクのような黒髪が揺れる。相当、疲れているようだ。彼女に話かけられたことに驚いたが、今はそんなことを気にしている場合ではない。


「具合悪そうですけど、大丈夫ですか?」


 僕はこの人のことが本当に心配なのだと思う。一体、「大丈夫ですか?」と何度聞いたのだろうか。次に来る答えが、わかりきっているのに聞いてしまう。