「いいの。こちらこそ本当にありがとう」


 自転車に乗って帰ろうと思ったその時、木村先輩は思いも寄らないことを言った。


「良かったら、うちに上がって行かない?」


「へ?」


 間抜けな声が出たが、喉から心臓が出てしまうほど驚いた。恋人の家に上がったことなど、今までない。よく考えたら、女性の友人の家ですらない。