私が中学に上がる前、知らない町で迷子になってしまい泣いてしまったことがあった。その時、歳下の男の子が心配して声をかけてくれたのだ。

 彼の顔も名前も覚えていないけれど、男の子の姿と斎藤くんが重なり、あの時のうれしさを思い出してしまった。

 だから、完全に無視できなかった。無視できなかったなら、私が嫌われて私が無視されるしかないかった。