私を置いて、善斗さんは映画館から足早に去って行った。


「ま、待って」


 追いかけたいのに、疲れていて身体が思うように動かない。

 私がロビーまで行った時には、彼の姿はなかった。力なくソファーに座ると、涙が溢れてくる。

 バレないように、上手く泣けたからだろうか。誰からも声をかけられなかった。