サッドクロムというバンドを教えてくれて、CDを貸してくれこともあった。荒々しいはずなのに優しい音に聴こえて、すぐに私にとって大切な音楽になった。

 彼の話には、斎藤くんという男の子が時々出てくる。まだ小学六年生で彼とは年が離れているけれど、下の名前で呼び合うくらい仲が良いようだ。いつしか私は、斎藤くんが羨ましくなっていた。