その時、木村先輩に対する違和感の正体が閃く。

 確かに彼女は酷い言葉を僕に浴びせたが、思い返してみてもその声に怒りや悪意を感じない。内容に気を取られていて、言われている時は全く気が付かなかった。

 さらに、感情もほとんど顔に出ていなかった。元から声や顔に感情が全く出ない人間だという可能性もあるが、それではあの悲しそうな顔の説明が付かない。やる理由が全くないため、演技でもなさそうだ。

 違和感の正体に気がつき、わからないことがまた増えてしまった。