しばらく続いた沈黙を、彼女の弱々しい声が打ち破る。


「……迷惑ではないかな」


「一時間以内に行きます」


「うん」


 電話を切り、最低限の準備だけして外に出た。

 夜空には雲が疎らにあり、月明かりを隠している。明かりの強さから察するに、今日は満月だろう。