「話したいことがあります」


「なに?」


 彼女の反応から察するに、どうやらまだ話す意思はありそうだ。まずは映画館で見た映像について、尋ねてみることにした。


「あの映画館で……」


 昨日のことを話そうとした時だ。急に言葉が出なくなった。まるで喉の使い方を忘れてしまったように、何度言おうとしても、全く喋れない。

 記号のことも、教会のことも、女の子のことも、これでは伝えられない。なにが起こったかわからず、ただ焦ることしかできなかった。