幸いなことに、凡人の僕は善斗くんと仲がいい。彼なら傷ついた木村先輩をどうにかしてくれるかもしれない。

 善斗くんにお願いしてみようと思った時、彼の方が先に口を開いた。


「オレさ、今、別の彼女がいるんだ」


 左手を開いて、甲を僕に向けてきた。自動販売機の明かりで指輪がよく見える。