「待ってください」


 敷地に入る前に、どうにか声が出た。


「なにかしら」


「大事な話があります」


「なに?」


 冷たい風が緩やかに吹き、木村先輩の髪がなびく。それでも、僕の全身は熱くなっていて、全く寒くなかった。

 もう、ここまで言ってしまったのなら、後戻りはできない。長いまつげの瞳を見て覚悟を決める。