「いいです。そのくらいのことはさせてください」


「でも……」


「お願いします」


「そこまで言うなら、お願いしようかな」


「ありがとうございます」


 今日を終わらせないために、半ば強引に頼み込んでしまった。迷惑かもしれないが、木村先輩と一緒にいたいのだ。少しでも長く、彼女と生きていることを共有したい。

 食事が終わり、二人は店を後にした。

 無言の帰り道に、心臓の音だけが響く。それは、彼女の最寄り駅に着いても、鳴り止むことはなかった。